「受注が増えるほど、バックオフィスが回らなくなる」
——EC・通販事業の成長期に必ず直面するこの課題に対して、受注処理のアウトソーシングは有効な打ち手です。しかし、業務範囲や費用構造を理解しないまま委託すると、かえってミスやコスト増を招くリスクがあります。
本記事では、受注処理アウトソーシングの定義から業務フロー、費用相場、失敗事例、選定基準までを体系的に解説します。
伊藤真也 - Arte株式会社 代表
WEB制作・デジタルマーケティング・コールセンター事業を展開するArte株式会社の代表。 2018年の創業以来、「地方の可能性を最大化する」を軸に、地域企業の集客・採用・売上アップを一貫して支援。 現場主義を大切にし、自ら営業・制作・運営にも関わりながら、お客様と同じ目線で課題解決に向き合うスタイルが信条。
受注処理アウトソーシングとは——定義と対応範囲
受注処理アウトソーシングとは、EC・通販・BtoBにおける受注確認から出荷指示までのバックオフィス業務を専門業者に委託するサービスです。
物流代行(倉庫・配送)とは異なり、受注データの処理・確認・入力といった「情報処理」に特化している点が特徴です。
受注処理の業務フロー
一般的な受注処理は以下の9ステップで構成されます。
| # | 工程 | 業務内容 | アウトソーシング可否 |
|---|---|---|---|
| 1 | 受注受付 | ECカート・FAX・電話・メールからの注文データ取得 | 対応可 |
| 2 | 受注内容確認 | 商品・数量・配送先・支払方法の確認 | 対応可 |
| 3 | 在庫確認 | WMS/基幹システムとの在庫照合 | 対応可 |
| 4 | 入金確認 | 銀行振込・コンビニ決済等の入金消込 | 対応可 |
| 5 | 受注データ入力 | 基幹システム・OMSへの受注登録 | 対応可 |
| 6 | 出荷指示 | 倉庫・物流への出荷データ連携 | 対応可 |
| 7 | 注文変更・キャンセル対応 | 顧客からの変更・キャンセル依頼の処理 | 範囲に差あり |
| 8 | 返品・交換処理 | 返品受付、返金処理、在庫戻し | 範囲に差あり |
| 9 | 問い合わせ対応 | 注文状況・配送状況の問い合わせ一次対応 | 一部業者のみ |
工程1〜6が中核業務であり、ほとんどの代行業者が対応しています。7〜9はオプション扱いのケースが多いため、契約前に対応範囲を明確にしてください。
なぜ今、受注処理のアウトソーシングが必要か

受注量の増加と処理品質の両立
EC市場の拡大に伴い、受注件数は増加を続けています。特に月間受注500件を超えると、手作業での処理限界が顕在化し、入力ミス・処理遅延が増加する傾向にあります。
属人化リスクの深刻化
受注処理は「誰でもできる」ように見えて、実際には商品コード体系・特殊な配送条件・取引先ごとのルールなど、暗黙知が多い業務です。担当者の離職や異動で業務が停滞するリスクは、事業規模が大きいほど深刻です。
コア業務への集中
受注処理に経営リソースを割くほど、商品開発・マーケティング・顧客開拓といった売上に直結する業務にかける時間が減少します。アウトソーシングにより、経営資源の再配分が可能になります。
アウトソーシングのデメリットと対策
一方で、受注処理の外注には以下のリスクが伴います。メリットとデメリットの両面を理解したうえで判断することが重要です。
- 業務ノウハウが社内に蓄積されない:委託先にオペレーションが集中すると、自社内に受注処理のノウハウが残りません。将来的な内製化を視野に入れる場合は、業務マニュアルの共同整備や定期的なナレッジ共有の仕組みを契約に含めてください
- 委託先への依存リスク:特定の1社に業務を集約すると、その業者のサービス品質低下や撤退時に事業継続が脅かされます。リスク分散のために、代替候補の業者を常に把握しておくことが推奨されます
- 柔軟性の制約:自社運用であれば即座に対応できるイレギュラー処理(特別割引・個別配送指定など)も、委託先では対応フロー外となり、処理が遅延するケースがあります。例外処理のルールを契約時に定義しておく必要があります
- 情報セキュリティリスク:顧客の個人情報・決済情報を外部に預けるため、情報漏えいリスクは常に存在します。Pマーク・ISMS取得の確認に加え、アクセス権限管理・通信暗号化・退職者のID無効化などの運用体制まで確認してください
これらのデメリットは、事前の契約設計とSLAの整備で大部分を軽減できます。アウトソーシングの判断基準について詳しくはアウトソーシング判断ガイドもご参照ください。
受注処理アウトソーシングの費用構造と相場
費用体系は大きく3つのモデルに分かれます。
課金モデルの比較
| 課金モデル | 仕組み | 向いている企業 | コスト目安 |
|---|---|---|---|
| 件数従量型 | 1件あたり○円の従量課金 | 受注量に波がある企業 | 50〜200円/件 |
| 月額固定型 | 月間処理件数の上限を設定し定額 | 受注量が安定している企業 | 月額5万〜30万円 |
| 業務量課金型 | 処理工数(人時)ベースで課金 | 業務範囲が広い・カスタム要件が多い | 時給換算1,500〜3,000円 |
規模別のコスト目安
- 月300件以下:月額3〜8万円。従量型でスモールスタートが可能
- 月300〜1,000件:月額8〜20万円。固定型+従量超過分の組み合わせが多い
- 月1,000件超:月額20万〜50万円以上。専任チーム配置型が視野に入る
「1件あたり単価×月間件数」の総額と、自社で処理した場合の人件費を比較することが判断の出発点です。正社員1名の月額人件費(約40〜50万円)と比較すれば、月1,000件程度でも外注の方がコスト効率が高いケースが多いです。
失敗事例に学ぶ——受注処理アウトソーシングの落とし穴

事例1:業務範囲の認識ズレで顧客対応が宙に浮いた
- 背景
- 通販企業が受注処理を外部委託したが、注文変更・キャンセル対応を委託範囲に含めていなかった
- 何が起きたか
- 顧客からの変更依頼が自社と委託先の間で滞留。対応が遅れてクレームに発展した
- 構造的原因
- 契約時に業務範囲(スコープ)を工程単位で明文化しなかった
- 回避策
- 上記9工程のうち、どこからどこまでを委託するかをSLAに明記する。特に「例外処理」の対応フローを事前に合意しておく
▶ 関連記事:コールセンター委託

事例2:システム連携の不備で二重入力が発生
- 背景
- BtoB卸売企業が受注処理を外注したが、FAX注文のデータ化と基幹システムへの入力が自動連携されなかった
- 何が起きたか
- 委託先がExcelに手入力した受注データを、自社でも基幹システムに再入力するダブルワークが発生
- 構造的原因
- 委託先の入力フォーマットと自社基幹システムの取込仕様を事前にすり合わせていなかった
- 回避策
- 契約前に、データの受け渡し形式(CSV/API/EDI)と連携テストを実施する

事例3:繁忙期にスタッフ不足で処理遅延
- 背景
- EC企業がセール時期に受注量が通常の4倍に増加した
- 何が起きたか
- 委託先のオペレーター体制が追いつかず、受注処理が2日遅延。出荷遅延と顧客クレームに波及した
- 構造的原因
- 波動対応(ピーク時の人員増強)について事前に取り決めていなかった
- 回避策
- 通常月と繁忙期の予測件数を共有し、波動対応の上限・追加費用・事前通知期間を契約に含める
選定基準——KPIで比較する5つの視点
委託先を比較する際は、以下の5つのKPI軸で評価します。
1. 処理精度(ミス率)
受注データの入力ミス率です。優良な業者はミス率0.01%以下(1万件に1件未満)を実現しています。ダブルチェック体制やRPAの活用有無を確認してください。
2. 処理リードタイム
受注受付から出荷指示完了までの時間です。当日15時受注→当日中に出荷指示完了が標準水準です。BtoB取引ではFAX・メール受注の場合、データ化のリードタイムも重要になります。
3. システム連携対応力
自社のECカート(Shopify、楽天、Amazon等)、OMS(NextEngine、CROSS MALL等)、基幹システムとのデータ連携が可能か。API連携・CSV取込・EDI対応の範囲を確認します。
4. 波動対応力
繁忙期(セール・年末・新生活シーズン)にオペレーター体制を増強できるか。常駐型か、シェアード型(複数クライアントの業務を同一チームが対応)かも確認ポイントです。
5. セキュリティ体制
顧客の個人情報(氏名・住所・決済情報)を扱うため、PマークまたはISMS(ISO 27001)の取得状況を確認します。アクセス権限管理・監視体制・データの暗号化も重要な判断材料です。
受注処理代行会社の比較——対応力で整理
委託先選びでは、自社の業態(EC/BtoB/通販)と受注チャネルに合った対応力を持つ業者を優先します。
| 会社名 | 対応領域 | 得意業種 | KPI管理 | CRM連携 | セキュリティ |
|---|---|---|---|---|---|
| 関通(KANTSU) | EC受注処理+物流 | EC・通販全般 | ミス率0.008% | 楽天/Amazon/Shopify/NextEngine | Pマーク |
| トランスコスモス | 統合受注・BPO | 大企業・製造業 | 独自KPI管理基盤 | 基幹システム連携 | ISMS |
| パーソルBPO | 受発注管理全般 | 製造・卸売・小売 | 対応あり | 個別要件対応 | Pマーク/ISMS |
| エスプールロジスティクス | フルフィルメント型 | EC・D2C | 処理速度SLA | 各種カート連携 | Pマーク |
| CO-NECTクロート | 受発注システム+代行 | BtoB卸売 | 対応あり | CO-NECT連携 | 対応あり |
業態別の選定ガイド
- EC・D2C:カート連携(Shopify/楽天/Amazon)が必須。関通・エスプール等のEC特化型が適する
- BtoB卸売:FAX・メール・EDI受注のデータ化が鍵。パーソルBPO・CO-NECTクロート等が対応
- 大企業・製造業:基幹システム連携+BCP対応が重要。トランスコスモス等のエンタープライズ型を検討
導入プロセス——契約から稼働までの流れ

ステップ1:現状分析(1〜2週間)
月間受注件数・受注チャネル(EC/FAX/電話/メール)・商品SKU数・繁忙期パターン・現在の処理体制(人数・時間)を数値化します。
ステップ2:業者選定・見積もり比較(2〜3週間)
3社以上から見積もりを取得し、総コスト(月額基本料+従量費+オプション費)で比較します。業者によって「含まれる業務」が異なるため、同一スコープでの比較が重要です。
ステップ3:業務設計・ルール整備(2〜3週間)
以下を委託先と共同で設計します。
- 受注データの受け渡し形式・連携テスト
- 例外処理ルール(在庫切れ・住所不備・不正注文の判定基準)
- エスカレーション基準(自社判断が必要なケースの通知方法)
- SLA(処理リードタイム・ミス率の目標値・波動対応条件)
ステップ4:並行稼働・移行(2〜4週間)
一括切替ではなく、特定チャネルまたは特定商品群から段階的に移行することを推奨します。並行期間中にミス率・処理速度を計測し、SLA達成を確認してから全面移行に進みます。
ステップ5:本稼働・定例レビュー
月次でKPIレビューを実施し、改善サイクルを回します。
- 処理ミス率:目標0.01%以下
- 処理リードタイム:受注→出荷指示完了の平均時間
- SLA達成率:契約条件の遵守率
- コスト効率:1件あたり処理コストの推移
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よくある質問(FAQ)
- 受注処理アウトソーシングと物流代行の違いは何ですか?
- 受注処理は「注文データの処理・確認・入力」という情報処理業務です。物流代行は「在庫保管・ピッキング・梱包・出荷」という物理的な業務です。両者を一括で委託できるフルフィルメント型のサービスもあります。
- FAXや電話での注文にも対応できますか?
- 対応可能な業者は多いです。FAX注文のOCR読取+手動確認、電話注文の受付・入力まで対応するサービスがあります。BtoB取引ではFAX受注のデータ化ニーズが特に高いです。
- 自社の基幹システムとの連携は可能ですか?
- API連携・CSV取込・EDI接続など、業者によって対応方法が異なります。契約前に自社システムとのテスト連携を必ず実施してください。既存のOMS(NextEngine、CROSS MALL等)を介した連携が効率的です。
- 最小何件から委託できますか?
- 従量課金型であれば月数十件から対応可能な業者もあります。ただし、業務設計・連携セットアップのコストを考慮すると、月100件以上がコスト効率の分岐点になるケースが多いです。
- 情報セキュリティは大丈夫ですか?
- 顧客の個人情報・決済情報を扱うため、Pマーク(プライバシーマーク)またはISMS(ISO 27001)の取得状況を必ず確認してください。加えて、アクセス権限管理・通信暗号化・オペレーター教育の体制もチェックポイントです。
- 繁忙期の対応はどうなりますか?
- 波動対応として、繁忙期にオペレーター増員が可能な業者を選びましょう。追加費用の発生条件・事前通知期間を契約時に取り決めておくことが重要です。
- 委託後に自社に戻すことは可能ですか?
- 可能です。ただし、委託期間中に蓄積された業務ノウハウの引き継ぎが必要です。契約終了時のデータ返還条件・引き継ぎ期間を事前に合意しておいてください。
- 受注管理システム(OMS)の導入とアウトソーシング、どちらを選ぶべきですか?
- 判断は「月間受注件数」「業務の複雑性」「社内リソース」の3軸で行います。月数百件で処理パターンが定型的な場合は、OMS導入で自社処理を効率化する方がコスト効率が高いケースがあります。一方、月1,000件超・複数チャネル・BtoB特有の個別対応が必要な場合は、アウトソーシングの方が品質と拡張性を両立しやすいです。両者を併用し、OMSで自動化できる部分は内製、例外処理や問い合わせ対応を外注するハイブリッド型も有効です。
まとめ——受注処理の外注判断はKPIベースで
受注処理のアウトソーシングは、処理品質の安定化とコア業務への経営資源集中を両立する手段です。ただし、業務範囲の認識ズレやシステム連携不備が失敗の主因になります。
選定時に押さえるべきポイントは以下の3つです。
- 業務スコープを9工程単位で明確にし、例外処理のフローまで合意する
- KPIベースのSLA(ミス率・リードタイム・波動対応)を契約に明記する
- システム連携のテスト稼働を契約前に実施する
「人手が足りないから外注する」ではなく「品質とコスト効率をKPIで管理する」視点で委託先を選ぶことが、受注処理アウトソーシング成功の鍵です。